OB・OG活動報告

このページでは、吉田研究室OB・OGの皆さんの近況や活躍ぶりを、ご自身からの投稿をベースにご紹介します。

福祉の世界で活躍している伊草拓也さん(2015年度卒業)から近況報告(2017.1.29)

私の仕事について思うこと

 2016年卒の伊草拓也と申します。研究室では、「見沼田んぼ福祉農園」を事例として、環境と障害者福祉の融合に関する研究を行っていました。現在は、障害者や高齢者、一般の求職者の雇用支援を行っている独立行政法人で働いています。

 障害者の方に関わる仕事をしている身としても、昨年起きた印象的な出来事の一つは、相模原障害者施設殺傷事件です。一晩にして罪なき19人もの尊い命が奪われたこの事件は、決してあってはならないことです。「重度の障害者は生きていてもしかたない」などと話し、役に立たない人間は要らないから殺してもいいとした植松聖容疑者に対し、世間からは大きな非難が浴びせられました。しかし、植松容疑者は、常人には全く持ちえない異常な考えを持っている者として非難を浴びましたが、果たして本当にそうなのでしょうか。

 確かに障害者(=役に立たない人間)であるからと言って殺してもいいと考える人はそうはいないでしょう。しかし、障害者(=役に立たない人間)は要らないという考えは、常人には全く持ちえない異常な考えなのでしょうか。恐らく、社会の構成員というレベルで見れば、そう考える人はそうはいないと思います。しかし、企業の構成員というレベルで見れば、そのような考えが本当に異常なものなのであれば、この国に私がやっているような仕事は必要ないのではないでしょうか。現在、就業を希望する障害者のうち、その6割は職に就くことができていません(伊草拓也「環境と障害者福祉の融合に関する研究~「見沼田んぼ福祉農園」を事例として~」(2016年))。このような現実があるのは、やはり企業の構成員レベルにおいては、障害者(=役に立たない人間)は要らないという考えがあるからでしょう。

 では、障害者の社会的地位を確立するには、企業の経営者などにそのような考えを捨てるよう積極的に働きかけていくのが望ましいのでしょうか。しかし、我が国が資本主義社会である以上、生産能力の高い人間を採用したいと考えるのは当然のことであり、健常者間の採用においては、その考えに対して特に非難が上がることはありません。では、どうすればよいのでしょうか。少なくとも、現時点では、我が国が資本主義社会である以上、障害者の社会的地位を確立するには、私が勤める機構などの組織が、企業に対しては、障害者の能力を発揮しやすい就労環境を作るサポートをしたり、障害者に対しては、自身の特性を生かしたスキルを身に付けるサポートをしたりすることによって、障害者が経済を回す構成要員の一員になることが最も近道なのではないかと考えます。

 そう考えたとき、自分の今の仕事は、障害者の方の単なる生活の安定だけではなく、この国に存在する障害者差別といった問題とも大きく関わってくる仕事であることに気付きました。私は、自身の仕事がそのような大きな責任を担っているということを常に肝に銘じ、日々業務に当たっています。

タイのHIV孤児施設「バーンロムサイ」にてボランティア活動を行った際の筆者(左)


OBの佐藤俊雄さんから、メッセージがつきました(2017.1.18)

吉田先生、研究室の皆さんへ

 吉田研究室で2011年度に修士を卒業したOBの佐藤俊雄です。本年もよろしくお願い致します。わたしの現役時代を振り返りながら、研究室のホームページのOB・OGコーナーにひとこと投稿させていただきます。現在の研究室メンバーや、研究室への入室を希望している方々に参考になれば幸いです。
 吉田研究室の特色として挙げられる点は、あらゆる学生に門戸が開かれていることです。
各学生の出身学部、専門分野は多岐に亘るため、バックグラウンドを活かしながら議論を交わし、見識を広めることができました。
また、研究室での指導を経て、政策を語るには、まず背景を知ることが大切だということ学びました。「なぜそうなったのか」「他の道はなかったのか」を掴むことで、今熟慮すべきこと、講ずべきことが明らかになりました。
 私は現在、都市政策分野(区画整理事業)の仕事に就いていますが、都市の将来像を描く上で、研究室での経験は大きな糧となっています。
 研究室には明るいひとばかり集まっています。学生さんが希望すれば吉田先生はおよそ飲み会に参加します。最近は酒量が落ちたそうですが。飲み会や食事会は、文系学生にとっては社会の見方を学ぶ上でとても大切ですし、わたしは就職した今も仕事を円滑に進める上でそれが大切だと実感しています。


遊牧地生態と少数民族の研究に打ち込む范明明(Fan Mingming)さんの便り(2015.8)

范明明(ファンミンミン)さんは、2009年8月に開催された『第一回日中環境実践研究』の授業に北京大学から参加しました。当時、北京大学の環境科学与工程学院の修士2年生でした。彼女は同年9月からの一年間、北京大学からの初めての交換留学生として環境・エネルギー研究科に在籍しました。范さんはこの頃すでに、内モンゴルや新疆で遊牧地域の生態保全政策の現地調査に従事していました。そして、これまでに360人を超える遊牧民にインタビューを行ってきました。その実績に基づいて 博士論文“Cross-scale Impacts of Payment for Ecosystem Services (PES) Policy of Arid Grassland Area in China”を執筆し、本年7月に北京大学から博士学位を取得しました。
現在は、中国社会科学院民族学与人类学研究所(北京市内)で研究活動を続けています。研究の主題は引き続き、自然資源と少数民族に関するものですが、これまでの大学での研究以上に、少数民族の文化や伝統的な知識といった社会的な側面に関心を寄せているとのことです。以下の英文と写真は本日、北京の范さんから送られてきたものです。
中国の民族問題の研究に掛ける范さんの強い意気込みは、最後の下り、”中国の56の少数民族のすべてを踏破したい”という言葉ににじみ出ています。中国の大きな政策目標である和諧(わかい)社会の推進にとって、范さんの研究はとても重要です。今後の研究の深化と成果に期待しています。



  I had been studying in Waseda University from 2009 to 2010, as one of the first two exchange students of “international environmental leadership program” between Peking University and Waseda University. During this year, I enjoyed my time in Japan, and lucky to be a member of Professor Yoshida’s research group, it was a warm family. I remembered the weekly seminar in which we can talk about our research, and several seasonal trip around Japan to see beautiful landscape. After that, I continue to pursue my doctor's degree in Peking University, and my research was about natural resources management, focusing on the rangeland management in China’s pastoral area.

 

 

 

 

花見 in Tokyo, 2009

  Since the 1990s, degradation, sandstorm, desertification and other words has become high-frequency narratives in grassland areas and degradation has become urgent ecological problem. When I started my study in Peking University since 2008, I did field work about pastoral ecological policy every summer in Inner Mongolia and Xinjiang, and I have interviewed more than 360 pastoralists until now, this experience is very special, giving me precious chance to know another different culture and natural land. Based on the above work, I finished my doctoral dissertation in July 2015, as the title “Cross-scale Impacts of Payment for Ecosystem Services (PES) Policy of Arid Grassland Area in China”.
  The innovation of this paper embodies in three aspects: (1) for the PES theory, put forward the concept of "social ecological system service" instead of "ecosystem services", to emphasize the complexity of target system of internal social and ecological processes; (2) for the research methods, a cross-scale analysis framework is established using social ecological system theory, and this framework will make up the insufficiency of current research content and the method; (3) according to the characteristics of arid area ecological system, identify the restriction of water resources and take it as an evaluation indicator, it provides a new perspective on the improvement PES policy in China’s pastoral area.

Field work in Xinjiang Jul.2011(with Kazak people)

Field work in Inner Mongolia Jul.2008 (with Mongolian people)

  I got my job in the Institute of Ethnology and Anthropology, Chinese Academy of Social Sciences, as a research assistant, continuing to study about natural resources in minority areas. Different from my previous working experience, I will focusing more on many minority groups, not only the nomadic people, and my first job is about minority in Yunnan province. And, the other different point is that I will consider more social factors in my research, especially understanding the different culture and indigenous knowledge. I love this job, and I hope in the near future I can walk around all the 56 ethnic groups in China as work, also as life experience.


Field work in Yunnan, Jul.2015 (with Lahu people)

Oxford大学博士課程に在学中の廖夏伟(Liao Xiawei)君からの便り (2015.5)

廖カイ(リュウカイ)君は、北京大学環境科学与工程学院の修士2年生だった2012年9月からの2年間、DDP(ダブル・デグリー・プログラム)学生として早稲田大学環境・エネルギー研究科に在籍し、吉田研に所属しました。(東京に滞在して早稲田に通学したのは2012年9月から2013年8月までの1年間で、2013年9月からの1年間は北京大学に通いながら両大学に在籍しました。この間、早稲田での研究はメール交信など遠隔で指導が行われます。)2014年7月に北京大学と早稲田大学の両大学から修士号を取得したのち、同年9月からは英国オックスフォード大学の博士課程に進学しました。彼は東京滞在中の2013年の夏に最初の査読論文をシンガポールで開催された国際会議に投稿し採択されています。それが「日中のCO2排出構造の比較に関する研究(Japan and China’s Energy-related CO2 Emissions: What can China learn from Japan?)」です。また、早稲田での修士論文のテーマは「中国のメガシティにおけるエネルギー起源のCO2の排出構造に関する研究(Study on the Energy-related CO2 Emissions of China’s Megacities)」でした。以下には、5月20日にオックスフォードから届いた廖カイ君の近況報告をそのまま掲載します。

After graduating from Waseda University, I started to pursue my Doctorate degree at Oxford University. My research project is “Study on the future conflicts between water demands and availabilities of China’s power sector”.

With China’s rapid economic growth and development of people’s living standard, there is foreseeable increase in electricity production in the future. While a significant amount of water is required for electricity production, mainly for cooling purpose, China’s water resource per capita is very low. Moreover, both the water demand by electricity generation and availabilities are very regional dependent issues in China and there lies significant difference within different areas. Given the aforementioned background, I am going to estimate China’s spatial and temporal water demands by electricity production given the foreseeable economic and population growth as well as water availabilities under climate change so that I can identify the possible future conflicts between water demands and availabilities. The adverse impacts and corresponding countermeasures will be explored given the water availabilities might fail the demands.

Studying at Oxford is truly a great experience for me to get in contact and learn from the world leading scholars as well as to make friends with the most talented peers. Apart from academic work, I am also actively involved in student society activities. One of my major extra-curricular hobbies is hiking. Therefore I joined the University hiking club. I have hiked to many beautiful places in the UK, such as Snowdonia, Lake District and Jurassic Coast and so forth. Hiking is not only a relaxing leisure for me, but also a great way to see the world and learn to cherish the nature and environment that we have, which drives me to devote myself in a career of environment protection.


上海の鄒昕(Zou Xin)さんからの便り (2015.05)

2014年3月に吉田研究室を卒業した鄒昕(スウキン)と申します。所属は政治学研究科ジャーナリズムコースですが、環境ジャーナリズムプログラムに参加し、研究テーマは環境報道中心でしたので、2012年4月に入学してからの二年間、ずっと吉田ゼミで研究をし、とても充実かつ楽しい二年間を送りました。研究テーマは「日中両国の新聞における環境報道の論調の比較分析」です。

現在はヤマハの中国拠点――上海事務所でマーケティング・広報の仕事をやっています。今担当しているのは、会社の中国公式サイト、CSR活動、展示会・展覧会の社外・社内調整で、毎月中国で発生している会社ニュースを記事にまとめ、本社にも投稿しています。
そして、ヤマハのピアノやキーボードなどの製品を中国の農民工小学校に寄贈し、愛心音楽教室を設立したり、大学で日本語スピーチコンテストのサポーターをしたりして、色々な活動に携わっています。元々大学時代はスピーチコンテストの選手だった私は、今は立場を変えて、日本語と日本文化に興味がある学生を支援できることをとてもうれしく思っています。

写真1 2014年5月の蘇州の農民工小学校に音楽教室寄贈式典

時々、新商品の記者発表会の司会もやります。2015年4月22日、ちょうど世界地球の日(Earth Day)に、聚乳酸 (PLA) Ecodearを使った世界初のリコーダーの記者発表会を担当し、この製品を生産する際に発生する二酸化炭素を20%削減し、地球温暖化防止に貢献することを中国全土のメディアに向けて発信しました。外資企業は特に環境保護とCSR活動に熱意を持っています。中国文化・社会・教育・環境に絶えず貢献を捧げる日系企業の姿を伝えたいと常に思っています。

写真2 リコーダーの記者発表会で司会を務めました

仕事以外に、会社のギタークラスにも参加しています。週一回の授業です。6歳からキーボードを学んでいますが、入社してからは新しい楽器にも挑戦しています(笑)。

写真3 会社の同僚と出前コンサート

今、中国では環境問題に関心を持つ人がだんだん増えてきたと、帰国してからつくづく思います。近年、「省エネ」、「グリーン」という言葉が色々な活動・展示会でしばしばスローガンとして掲げられています。上海は中国の国際的な大都市で、教育度も高いので、ここに住んでいる人は環境意識がもっとも高いと思います。私の周りには毎日PM2.5指数をチェックしている人が少なくありません。会社内でも再生紙の活用などに心かけています。今年(2015年)2月に、CCTV(中国中央テレビ)の元女性記者が制作した中国の深刻な大気汚染問題に関する調査報道ビデオが中国で大きな話題になって、国民の環境意識の向上と調査報道の真実性で社会に波紋を投げました。
在学期間はもちろんのこと、卒業して帰国してからも、吉田先生や他のゼミメンバーと頻繁にコミュニケーションをしています。ただ、話題は在学時と違って、仕事とか、中国社会の現状、環境意識の変化などに拡大しました。吉田研の和やかな雰囲気はいつまでも変わりません。これまでも色々と勉強になりました。これからもずっと皆様と一緒に成長していきたいと願っています。


卒業後も学会活動を続ける趙冉(Zhao Ran)さん (2014.08)

趙冉(チョウラン)さんは2013年度の環境・エネルギー研究科の卒業生です。彼女は卒業後に日本の企業に勤務し、都内のオフィスで多忙な日々を送っています。その中で彼女はいまも研究活動を続けています。2014年8月2日に開催された日本環境教育学会の大会では、修士論文の内容をさらに発展させた研究成果を発表しました。趙ランさんが発表に用いたスライドを≪ここに≫掲載します

この研究では日中の小学校高学年の社会と理科の教科書に盛られた環境教育の項目・内容・視点を丹念に比較しています。また、北京市内の中学1年生と東京都新宿区内の小学6年生(中国では新学年が9月から始まるため実質的に同じ学年の生徒)とその両親を対象に、環境知識と環境意識に関するアンケート調査を行い比較分析しています。このアンケートでは、学校の先生に対して環境教育に対するご意見も伺いました。調査規模も大きく、”親子ペア”での意識調査を行った点がユニークです。教科書の記載内容の比較分析からは、各国政府の政策方針や環境思想の違いが教科書にも反映されていることがわかりました。しかし、アンケート調査の結果からは、日中の生徒の環境に関する知識や意識に大きな差異がないことがわかりました。それぞれのお国柄はあるけれど、中国の環境教育のレベルは日本と比肩できるほど高まっている、というのが趙冉さんの研究が示唆する結論のようです。